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つめ
探偵クラブ 烙印
大下 宇陀児
大下宇陀児『探偵クラブ 烙印』。同一底本的分册已合并为一书。收入:爪、毒、偽悪病患者。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,509 字 · 103 页
「なるほど、そうでしたか」
といって、この時彼は、さもさも思い出したように言い添えた。
「そうそう、そういうと僕も思出しましたよ。竹中君がいっておりましたっけ。猫が研究室の方へ這入ると大変だなんて――」
「へへえ、すると余程心配するにはしてはしていたんですねえ」
「そうらしかったですよ。用心していながら到頭やられたというものでしょう。夜のうちに、扉が開いていたもんだから、猫の奴が這入って行ったんですな」
「多分、そんなようなところでしょう――」
俵弁護士は、この時ひょいと口を噤んで、パチパチと眼を瞬いた。何か気になった様子である。
「あ、ですがね、一寸腑に落ちないこともありますね」
「な、なんです?」
「扉です。扉が開いていたっていうことなんですがね。それ程用心深くしていたものが、どうして扉を開け放しにして寝たんでしょうか」
「さア――」
と答えて沖野は、めまぐるしく思案を廻らした。向うでは何気なしにいっているようであるが、これはなかなか重大な質問だった。
ここで扉が自然に開いたのだということを説明せねばならぬのだった。かつての蒸し暑かった日のこと、竹中は、扉の把手の工合が悪いといった。