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つめ

探偵クラブ 烙印

大下 宇陀児

大下宇陀児『探偵クラブ 烙印』。同一底本的分册已合并为一书。收入:爪、毒、偽悪病患者。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,509 字 · 103 页

青空文庫

五

この時、竹中家へはもう沢山の見舞客が詰めかけて来ていて、彼はそれらの客人のうちに、検事とか刑事とかいうようなものがいるのではないかと、ビクビクもので見廻した。幸にしてそれらしい姿もない。――

死体が母家の方へ移されたというので、今度は沖野は母家の玄関から這入って行った。が、彼が恰度玄関の式台を上ろうとした時であった。

彼はギョッとしてそこへ立停った。

殆んど真正面に、良子がマミイを抱いて彳んでいたのだった。

「呀ッ! 危い」

こう叫ぼうとした口を辛くも噤んだ。これはこの瞬間、一種の錯覚であったのである。マミイの爪に、恐ろしい破傷風菌が附着しているように思ったのだった。

「さあ、どうぞ」

途端に、竹中家の親戚らしい人がこういってくれて、彼はホッと胸を撫で下した。

すぐに、奥の方から香の煙がただよって来たのであった。

五

「どうも実に突発的な災難ですねえ」

いかにも闊達らしい四十年配の一人の紳士が、なにげない調子で、沖野鳳亭に話しかけたのは、それから間も無くの後である。

「や、私は俵巌という者でして、こちらへは前から御懇意にしていたのですよ。いかがです、あちらへ行って一息抜いて来ませんか」