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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
昭夫がそこに混って遊んでいた。癇のきつい浅黒い顔に大亢奮を燃えたたせて、ドタリと下へすべりついたとたん、昭夫の目に、通りがかっているひろ子と縫子は入りようもない。
「まあ、あの泥!」
縫子は、笑ってちょっと立ち止った。この昭夫の姿を見、そこからもう新道の下に見えはじめた屋根屋根を眺めたとき、ひろ子は我を忘れて前のめりになっていた感情のはやりから、急にひき戻された。この屋根屋根は、「後家町」の屋根屋根であった。決して還ることのない人々への悲しさと壊れた生活の思いのなまなましい屋根屋根である。今まで吹きつける火焔のようにはばかりなくほとばしっていた自分の熱中が、この屋根屋根の下から動きようもなく暮す女たちにとって、どう感じられるであろうか。ひろ子は、自分から正気を失わせそうな歓喜と期待、勇躍の輝やかしさに対して、萎縮した。これらの悲しい妻に対して、もっともしのぎやすい形でこの歓びを表現するのが、ひろ子の義務ではないだろうか。
「お姉さん、どうして? 疲れてでありますか? あんまりいそいで歩かれたけ」
本当にくたびれの出た顔つきで、ひろ子はゆっくり裏から石田の土間に入って行った。