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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
仲介者が俗に云うゴロツキならいざ知らず、立派な牧師が立会い事済みとなりしものを、誰が考えましても後から又金をゆすられる心配ありましょうか、ありません、荊妻もその一切を承知して居るものに自分は荊妻に申訳ないからとて同人を殺す、そのような事を気狂いならいざ知らず、自分はいたしません、自分には出来ないのであります。
人生無常年齢十代で死す者もありますれば、二十代で逝く者もあります。自分は五十を余すこと六ツ、命を惜しみはいたしません、然し冤罪の下に悪名を帯び斃れる事を嘆くものであります。神楽坂署で申立ての土方を頼み放火させた覚えありません。自分も又放火した覚えもありません。
英邁賢明なる判官閣下、事件の前後に付き御判断なし下され自分の犯してあらざる事、御証明いただき度し」
以上が上願書の論文である。
六月四日に古我判事の手許に差出した支倉の上願書は昨日掲げた通り、頗る哀調に充ちて、所謂哀訴嘆願と云う風であるが、越えて六月十七日及追加として十九日に出した上願書なるものはガラリと態度が変って、こゝに初めて彼は神楽坂署の拷問を訴え出した。事がならないと見るとガラリ/\と態度を変えるのが支倉の悪い癖だ。