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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

近松氏から郵便来ている。出る時に、十二社の吉井勇さんのところに女中がいるから、ひょっとしたら、あんたを世話してあげると云う、先生の言葉だったが、薄ずみで書いた断り状だった。

夕方新宿の街を歩いていると、妙に男の人にすがりたくなった。

誰か助けてくれる人はないかなア……新宿駅の陸橋に紫色のシグナルがチカチカゆれているのを見ると、涙で瞼がふくらんで、子供のようにしゃっくりが出た。

当ってくだけてみよう――。

宿の叔母さんに正直に話しする。仕事がみつかるまで、下で一緒にいていゝと云ってくれた。

「あんた、青バスの車掌さんにならないかね、いゝのになると七拾円位いはいるそうだが……。」

どこかでハタハタでも焼いているのか、とても臭いにおいが流れて来る。七拾円もはいれば素的だ。ブラさがるところをこしらえなくては……。十燭の電気のついた帳場の炬燵にあたって、お母アさんへ手紙を書く。

――ビョウキシテ、コマッテ、イルカラ、三円クメンシテ、オクッテクダサイ。

此間の淫売婦が、いなりずしを頬ばりながらはいって来る。

「おとついはひどいめに会った! お前さんもだらしがないよ。