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ほうろう

放浪

織田 作之助

「文學界 第七年第五号」文藝春秋、1940(昭和15)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,399 字 · 47 页

青空文庫

気の変りやすい北田は売屋をやることもあった。天満京阪裏の古着屋で一円二十銭出して大阪××新聞の法被を仕込み、売るものはサンデー毎日や週刊朝日の月おくれ、または大阪パックの表紙の発行日を紙ペーパーでこすり消したもの、三冊十五銭で如何にも安いと郊外の住宅を戸別訪問して泣きたんで売り歩く。かと思うと、キング、講談倶楽部、富士、主婦の友、講談雑誌の月遅れ新本五冊とりまぜて五十銭、これは主に戎橋通りの昼夜銀行の前で夜更けの女給の帰りを当てこむのだ。仕入先は難波の元屋で、ここで屑値で買い集めた古本をはがして、連絡もなく、乱雑に重ねて厚みをつけ、もっともらしい表紙をつけ、縁を切り揃えて、月遅れの新本が出来上る。中身は飛び飛びの頁で読まれたものでないから、その場で読めぬようあらかじめセロファンで包んで置くと、如何にも新本だ。順平はサクラになったり、時には真打になったり、夜更けの商売で、顔色も凄く蒼白んだ。儲の何割かをきちんきちんと呉れるオイチョカブの北田を、順平は几帳面な男と思い、ふと女めいたなつかしさも覚えていた。

ある日、北田は博打の元手もなし売屋も飽いたとて、高峰、どこぞ無心の当てはないやろか。