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しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
三十分ばかり火を燃やしていたのだけれども、どうしても卵は燃えないので、子供たちに卵を火の中から拾わせて、梅の木の下に埋めさせ、私は小石を集めて墓標を作ってやった。
「さあ、みんな、拝むのよ」
私がしゃがんで合掌すると、子供たちもおとなしく私のうしろにしゃがんで合掌したようであった。そうして子供たちとわかれて、私ひとり石段をゆっくりのぼって来ると、石段の上の、藤棚の蔭にお母さまが立っていらして、
「可哀そうな事をするひとね」
とおっしゃった。
「蝮かと思ったら、ただの蛇だったの。けれど、ちゃんと埋葬してやったから、大丈夫」
とは言ったものの、こりゃお母さまに見られて、まずかったかなと思った。
お母さまは決して迷信家ではないけれども、十年前、お父上が西片町のお家で亡くなられてから、蛇をとても恐れていらっしゃる。お父上の御臨終の直前に、お母さまが、お父上の枕元に細い黒い紐が落ちているのを見て、何気なく拾おうとなさったら、それが蛇だった。するすると逃げて、廊下に出てそれからどこへ行ったかわからなくなったが、それを見たのは、お母さまと、和田の叔父さまとお二人きりで、お二人は顔を見合せ、けれども御臨終のお座敷の騒ぎにならぬよう、こらえて黙っていらしたという。