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しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
とおっしゃった。
けれども、お母さまのお熱は、それから一週間経っても下らなかった。咳はおさまったけれども、お熱のほうは、朝は七度七分くらいで、夕方になると九度になった。お医者は、あの翌日から、おなかをこわしたとかで休んでいらして、私がおくすりを頂きに行って、お母さまのご容態の思わしくない事を看護婦さんに告げて、先生に伝えていただいても、普通のお風邪で心配はありません、という御返事で、水薬と散薬をくださる。
直治は相変らずの東京出張で、もう十日あまり帰らない。私ひとりで、心細さのあまり和田の叔父さまへ、お母さまの御様子の変った事を葉書にしたためて知らせてやった。
発熱してかれこれ十日目に、村の先生が、やっと腹工合いがよろしくなりましたと言って、診察しにいらした。
先生は、お母さまのお胸を注意深そうな表情で打診なさりながら、
「わかりました、わかりました」
とお叫びになり、それから、また私のほうに真正面に向き直られて、
「お熱の原因が、わかりましてございます。左肺に浸潤を起しています。でも、ご心配は要りません。お熱は、当分つづくでしょうけれども、おしずかにしていらっしゃったら、ご心配はございません」