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しゃよう

斜陽

太宰 治

「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页

青空文庫

頭がちょっと痛くなって、寒気がして、それから熱が出るの」

外は、もう、暗くなっていて、雨はやんだようだが、風が吹き出していた。灯をつけて、食堂へ行こうとすると、お母さまが、

「まぶしいから、つけないで」

とおっしゃった。

「暗いところで、じっと寝ていらっしゃるの、おいやでしょう」

と立ったまま、おたずねすると、

「眼をつぶって寝ているのだから、同じことよ。ちっとも、さびしくない。かえって、まぶしいのが、いやなの。これから、ずっと、お座敷の灯はつけないでね」

とおっしゃった。

私には、それもまた不吉な感じで、黙ってお座敷の灯を消して、隣りの間へ行き、隣りの間のスタンドに灯をつけ、たまらなく侘びしくなって、いそいで食堂へ行き、罐詰の鮭を冷たいごはんにのせて食べたら、ぽろぽろと涙が出た。

風は夜になっていよいよ強く吹き、九時頃から雨もまじり、本当の嵐になった。二、三日前に巻き上げた縁先の簾が、ばたんばたんと音をたてて、私はお座敷の隣りの間で、ローザルクセンブルグの「経済学入門」を奇妙な興奮を覚えながら読んでいた。これは私が、こないだお二階の直治の部屋から持って来たものだが、その時、これと一緒に、レニン選集、それからカウツキイの「社会革命」