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しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
土間があって、それからすぐ六畳間くらいの部屋があって、たばこの煙で濛々として、十人ばかりの人間が、部屋の大きな卓をかこんで、わあっわあっとひどく騒がしいお酒盛りをしていた。私より若いくらいのお嬢さんも三人まじって、たばこを吸い、お酒を飲んでいた。
私は土間に立って、見渡し、見つけた。そうして、夢見るような気持ちになった。ちがうのだ。六年。まるっきり、もう、違ったひとになっているのだ。
これが、あの、私の虹、M・C、私の生き甲斐の、あのひとであろうか。六年。蓬髪は昔のままだけれども哀れに赤茶けて薄くなっており、顔は黄色くむくんで、眼のふちが赤くただれて、前歯が抜け落ち、絶えず口をもぐもぐさせて、一匹の老猿が背中を丸くして部屋の片隅に坐っている感じであった。
お嬢さんのひとりが私を見とがめ、目で上原さんに私の来ている事を知らせた。あのひとは坐ったまま細長い首をのばして私のほうを見て、何の表情も無く、顎であがれという合図をした。一座は、私に何の関心も無さそうに、わいわいの大騒ぎをつづけ、それでも少しずつ席を詰めて、上原さんのすぐ右隣りに私の席をつくってくれた。