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しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
ギロチン、ギロチン、シュルシュルシュ、ギロチン、ギロチン、シュルシュルシュ、と低く口ずさみながら、上原さんが私たちの部屋にはいって来て、私の傍にどかりとあぐらをかき、無言でおかみさんに大きい封筒を手渡した。
「これだけで、あとをごまかしちゃだめですよ」
おかみさんは、封筒の中を見もせずに、それを長火鉢の引出しに仕舞い込んで笑いながら言う。
「持って来るよ。あとの支払いは、来年だ」
「あんな事を」
一万円。それだけあれば、電球がいくつ買えるだろう。私だって、それだけあれば、一年らくに暮せるのだ。
ああ、何かこの人たちは、間違っている。しかし、この人たちも、私の恋の場合と同じ様に、こうでもしなければ、生きて行かれないのかも知れない。人はこの世の中に生れて来た以上は、どうしても生き切らなければいけないものならば、この人たちのこの生き切るための姿も、憎むべきではないかも知れぬ。生きている事。生きている事。ああ、それは、何というやりきれない息もたえだえの大事業であろうか。
「とにかくね」
と隣室の紳士がおっしゃる。
「これから東京で生活して行くにはだね、コンチワァ、という軽薄きわまる挨拶が平気で出来るようでなければ、とても駄目だね。