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しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
「ここへ寝給え。僕は帰る。あしたの朝、迎えに来ます。便所は、階段を降りて、すぐ右だ」
だだだだと階段からころげ落ちるように騒々しく下へ降りて行って、それっきり、しんとなった。
私はまたスイッチをひねって、電燈を消し、お父上の外国土産の生地で作ったビロードのコートを脱ぎ、帯だけほどいて着物のままでお床へはいった。疲れている上に、お酒を飲んだせいか、からだがだるく、すぐにうとうととまどろんだ。
いつのまにか、あのひとが私の傍に寝ていらして、……私は一時間ちかく、必死の無言の抵抗をした。
ふと可哀そうになって、放棄した。
「こうしなければ、ご安心が出来ないのでしょう?」
「まあ、そんなところだ」
「あなた、おからだを悪くしていらっしゃるんじゃない? 喀血なさったでしょう」
「どうしてわかるの? 実はこないだ、かなりひどいのをやったのだけど、誰にも知らせていないんだ」
「お母さまのお亡くなりになる前と、おんなじ匂いがするんですもの」
「死ぬ気で飲んでいるんだ。生きているのが、悲しくて仕様が無いんだよ。わびしさだの、淋しさだの、そんなゆとりのあるものでなくて、悲しいんだ。