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しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
姉さん。
僕は、死んだほうがいいんです。僕には、所謂、生活能力が無いんです。お金の事で、人と争う力が無いんです。僕は、人にたかる事さえ出来ないんです。上原さんと遊んでも、僕のぶんのお勘定は、いつも僕が払って来ました。上原さんは、それを貴族のケチくさいプライドだと言って、とてもいやがっていましたが、しかし、僕は、プライドで支払うのではなくて、上原さんのお仕事で得たお金で、僕がつまらなく飲み食いして、女を抱くなど、おそろしくて、とても出来ないのです。上原さんのお仕事を尊敬しているから、と簡単に言い切ってしまっても、ウソで、僕にも本当は、はっきりわかっていないんです。ただ、ひとのごちそうになるのが、そらおそろしいんです。殊にも、そのひとご自身の腕一本で得たお金で、ごちそうになるのは、つらくて、心苦しくて、たまらないんです。
そうしてただもう、自分の家からお金や品物を持ち出して、ママやあなたを悲しませ、僕自身も、少しも楽しくなく、出版業など計画したのも、ただ、てれかくしのお体裁で、実はちっとも本気で無かったのです。本気でやってみたところで、ひとのごちそうにさえなれないような男が、金もうけなんて、とてもとても出来やしないのは、いくら僕が愚かでも、それくらいの事には気附いています。