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しゃよう

斜陽

太宰 治

「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页

青空文庫

あのひとの持っているのは、田舎者の図々しさ、馬鹿な自信、ずるい商才、それだけなんです。

おそらくあのひとは、他のひとの絵は、外国人の絵でも日本人の絵でも、なんにもわかっていないでしょう。おまけに、自分の画いている絵も、何の事やらご自身わかっていないでしょう。ただ遊興のための金がほしさに、無我夢中で絵具をカンヴァスにぬたくっているだけなんです。

そうして、さらに驚くべき事は、あのひとはご自身のそんな出鱈目に、何の疑いも、羞恥も、恐怖も、お持ちになっていないらしいという事です。

ただもう、お得意なんです。何せ、自分で画いた絵が自分でわからぬというひとなのですから、他人の仕事のよさなどわかる筈が無く、いやもう、けなす事、けなす事。

つまり、あのひとのデカダン生活は、口では何のかのと苦しそうな事を言っていますけれども、その実は、馬鹿な田舎者が、かねてあこがれの都に出て、かれ自身にも意外なくらいの成功をしたので有頂天になって遊びまわっているだけなんです。

いつか僕が、

「友人がみな怠けて遊んでいる時、自分ひとりだけ勉強するのは、てれくさくて、おそろしくて、とてもだめだから、ちっとも遊びたくなくても、自分も仲間入りして遊ぶ」