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しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
と言いかけて、自分があんまりみじめで、涙がわいて出て、それっきりうつむいて黙った。警察に連れて行かれて、罪人になるのかも知れない、とそのとき思った。はだしで、お寝巻のままの、取乱した自分の姿が急にはずかしくなり、つくづく、落ちぶれたと思った。
「わかりました。お母さんは?」
と藤田さんは、いたわるような口調で、しずかにおっしゃる。
「お座敷にやすませておりますの。ひどくおどろいていらして、……」
「しかし、まあ」
とお若い二宮巡査も、
「家に火がつかなくて、よかった」
となぐさめるようにおっしゃる。
すると、そこへ下の農家の中井さんが、服装を改めて出直して来られて、
「なにね、薪がちょっと燃えただけなんです。ボヤ、とまでも行きません」
と息をはずませて言い、私のおろかな過失をかばって下さる。
「そうですか。よくわかりました」
と村長の藤田さんは二度も三度もうなずいて、それから二宮巡査と何か小声で相談をなさっていらしたが、
「では、帰りますから、どうぞ、お母さんによろしく」
とおっしゃって、そのまま、警防団長の大内さんやその他の方たちと一緒にお帰りになる。
二宮巡査だけ、お残りになって、そうして私のすぐ前まで歩み寄って来られて、呼吸だけのような低い声で、