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しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
中毒は、それこそ、精神の病気なのかも知れない。私が上原さんをほめて、そうして弟から上原さんの著書を借りて読んで、偉いお方ねえ、などと言うと、弟は、姉さんなんかにはわかるもんか、と言って、それでも、とてもうれしそうに、じゃあこれを読んでごらん、とまた別の上原さんの著書を私に読ませ、そのうちに私も上原さんの小説を本気に読むようになって、二人であれこれ上原さんの噂などして、弟は毎晩のように上原さんのところに大威張りで遊びに行き、だんだん上原さんの御計画どおりにアルコールのほうへ転換していったようであった。薬屋の支払いに就いて、私がお母さまにこっそり相談したら、お母さまは、片手でお顔を覆いなさって、しばらくじっとしていらっしゃったが、やがてお顔を挙げて淋しそうにお笑いになり、考えたって仕様が無いわね、何年かかるかわからないけど、毎月すこしずつでもかえして行きましょうよ、とおっしゃった。
あれから、もう、六年になる。
夕顔。ああ、弟も苦しいのだろう。しかも、途がふさがって、何をどうすればいいのか、いまだに何もわかっていないのだろう。ただ、毎日、死ぬ気でお酒を飲んでいるのだろう。