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しゃよう

斜陽

太宰 治

「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页

青空文庫

おわかりにならなかったら、……殴るわよ。

いちど、本当に、こちらへ遊びにいらっしゃいません? 私から直治に、あなたをお連れして来るように、って言いつけるのも、何だか不自然で、へんですから、あなたご自身の酔興から、ふっとここへ立寄ったという形にして、直治の案内でおいでになってもいいけれども、でも、なるべくならおひとりで、そうして直治が東京に出張した留守においでになって下さい。直治がいると、あなたを直治にとられてしまって、きっとあなたたちは、お咲さんのところへ焼酎なんかを飲みに出かけて行って、それっきりになるにきまっていますから。私の家では、先祖代々、芸術家を好きだったようです。光琳という画家も、むかし私どもの京都のお家に永く滞在して、襖に綺麗な絵をかいて下さったのです。だから、お母さまも、あなたの御来訪を、きっと喜んで下さると思います。あなたは、たぶん、二階の洋間におやすみという事になるでしょう。お忘れなく電燈を消して置いて下さい。私は小さい蝋燭を片手に持って、暗い階段をのぼって行って、それは、だめ? 早すぎるわね。

私、不良が好きなの。それも、札つきの不良が、すきなの。