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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

一擒一縦

主君の居城にも、大きな変化がその間にあった。

かねてから計画は進んでいたのであるが、地勢水利の悪い清洲をすてて、小牧山へ居城を移したことである。

城下の民衆も、みな信長について、新城の膝下へ移転し、小牧山には新しい町屋が旺んに興りつつあった。

藤吉郎を、その新城に見ると、信長は労を犒って、

「約束である。洲股城には、そのままその方が住め、禄五百貫を与えよう」

と、いった。

さらに、非常な機嫌で、主従雑談の末、それまで名乗を持たない、木下藤吉郎に、

秀吉。

という名をも与えた。

一擒一縦

築き取りにするがいい。

首尾よく工を成し遂げたらその城はおまえのものだ。

信長と云い交わした当初の約束は確かにそうだったが、竣工を告げに帰ると、

――そのまま住め。

とはいったが、与えるとはいわれなかった。

同じようなものだが、藤吉郎秀吉は、まだ一城の主たるの資格はゆるされないものと思った。

なぜならば、自分の推挙で、新たに織田家の家臣となった蜂須賀小六に対しても、

「秀吉の後見として、そちも洲股に詰めておるように」

と、命があったからである。

主君とはそうしたものか、などという不平を抱く代りに、藤吉郎は、