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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
10 第十分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页
与える方にとっては、無価値のものであった。が、佐吉のこと、それをどう利用し、どのくらいな収入としているか、秀吉は興味をもって見ていたのである。
佐吉がそれを乞うとき、もし私にその不用地を賜わるならば、事あるとき、一万石取りに匹敵する侍を出して、軍務のお役にたててみせます、と大言していた。――これも秀吉が、おもしろいことをいうやつだと思ったことのひとつだった。
その佐吉から京都大坂の世情を徴してみると、信雄に端を発したこんどの戦争は、たれも秀吉対信雄とは考えていない。秀吉対家康と見ているのだ。信長なき後、秀吉にとって、せっかく平和になるかと思われたものが、またぞろ、天下を二つにわかち、諸州にわたる大戦争が眼前に来たものとして、人心は極度な不安にくるまれているという。
たとえば、堂上のうちにも、大いにこれを悲しむ者があり、多聞院日記の筆者のごときは、天正十三年三月の日記の一項に、
――天下動乱ノ色アラハル。如何ニ成リユク可キヤラン。心細キ者ナリ。神慮ニ任セ、闇々トシテ明ケ暮スマデ也。端ナキ事端ナキ事。
と、その痛嘆を書きつけているがごときものが、一般の世態にも、もっと濃厚に露骨に見られていたであろう。