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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
10 第十分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页
下級の士と立ち交じって、武士の態をよく見習いとうございます)
勿論、ゆるされた。故に、氏郷はその若年時代には、柴田勝家の配下にあって、兵たちと、馬糞の中の陣生活をしていたこともあるのである。
いま、二十九歳。すでに彼の重器たる質は、秀吉も世間も、認めている。
柳ヶ瀬の後、秀吉が、戦功として、亀山を、氏郷へ与えようとしたが、彼は享けなかった。
(亀山は、関一政が、祖々累代所領の地。あわれ、私に下さるおつもりで、一政に返し賜われば、彼も私も、いかに欣しいかわかりませぬ)
関氏と蒲生家とは、遠縁にはあたるが、それにしても、できないことである。信長に深く愛されていた氏郷は、今、秀吉からも、心から惚れ込まれていること、疑うべくもない。
――が、思うに。
いかに信長が、彼を愛していたにせよ、その実子、信孝、信雄の愛に比すれば、当然、同日の談ではなかったろう。しかも、信孝をあのような悲命に終らせ、信雄を今日のごとき者にしたのは、またその盲愛であったといえないこともない。
難い哉、名門の父も。
氏郷の訪問後、数日経て、再び氏郷と池田勝入の名で、書状があった。
信雄は、数日来、甚だ機嫌がよく、浮いている色さえ見えたが、