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しんさいゆうき
新西遊記
久生 十蘭
「別冊文藝春秋 第十九号新春小説集」1950(昭和25)年12月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,654 字 · 52 页
鼓楼のある三つの大門と、電光形の石階と、迷路のように上下八方に通じている暗道の仕掛を見ると、この宏大な宮殿は王宮と城塞をかねていることがわかる。神獣や曼陀羅を彫刻した仏殿のおどろくべきコレクションや、黄金の蓮の花の上に立っている宝石を鏤めた十六アンパン(約八十尺)の純金の仏陀像を挙げずとも、ラッサがラマ教徒の聖都だという不変の証拠がある。数えきれぬ僧院と精舎で唱和する読経の声が、鐃※(「金+拔のつくり」、第3水準1-93-6)と太鼓の伴奏で絶えることなく空中にただよい、メッカをめざして何百里の困難な旅をしてきた巡礼が、半リーグもある長い参道を、一歩ごと額を大地にうちつけながら、大仏殿のほうへ這って行く敬虔なすがたが見られる」
アフリカ大陸の暗黒地帯、サハラ砂漠の中央、黒人国イスラム王国の文化の中心になっているトンブゥクツーという学問の都があって、そこのサンコレ大学にギリシャ、ラテンの詩文の写本やアラビヤ語の古典が集まっているといわれ、回教の大学生がトンブゥクツーの黄金の富の鵞鳥のペンでトルコ王に書き送ったという佯りの記述があるが、ラッサは伝説のなかにあるのではなく、絹の交易路を通って印度を横断し、ブータンとパミールを経て入ってきたシリヤ、ペルシャの文化の原形が潴溜している学問の偉大なる都なのである。