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ひはかがやけり
日は輝けり
宮本 百合子
「中央公論」1917(大正6)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 76,445 字 · 152 页
けれども、どうかしてもうすっかり衰えきって、三対あったらしい脚も、二本は中途から折れて、胴の傍に短かく根元がついている。すべてが、実にこまかく、きゃしゃにまとまっている。まるで生きていられることさえ疑われるほどである。が、羽根が見えない。紙の上に目を摺りこむようにして見ると、虫は仰向けになって、落ちて来たらしい。細い体に敷かれて、半透明な羽根が僅かばかり覗いていた。
暫くの間虫は脚一つ動かさず、非常に静かにしていたが、やがて急に、真中の一対の脚を高く振りかざしながら、ごく狭い範囲――拇指を押しつけたくらい――の中を、頭を中心にしてぐるぐる、ぐるぐると動きまわった。
実にかすかな、小さい運動ではあるが、虫にとっては大変に辛いらしい。細い体中をこわばらせ、ほとんどもがくように動く、浩は少しびっくりした。そして、多大の興味をもって観ているうちに、更に驚くべきことを発見したのである。この名も知れない一匹の小虫は、二つに裂けて見える胴体の最終部から、目にも見えないような卵を生みつけていたのである。
毛筋ほどの脚を延ばしきり、体を燭の柄のように反らせ、この小虫にとっては、恐らく無上の苦痛を堪えながら、完全に責任を果そうと努力しているらしい様子を見ると、浩は一種の厳粛な感動にうたれた。