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にちにちへいあん

日日平安

山本 周五郎

「サンデー毎日臨時増刊涼風特別号」1954(昭和29)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,297 字 · 56 页

青空文庫

すぐに見張りの者にみつかってしまいましたの」

「逃げだしてどうするつもりだった」

「こいそと二人であなたのあとを追うつもりでした」

「乱暴なことを」と十郎太が云った、「そうすると伯母上は自害なさらなかったんだな」

「でもわかりませんわ、わたくしの逃げたあとで自害したかもしれませんし、失敗したのでやめたかもしれませんし」

「冗談じゃない」と十郎太はとびあがりながら云った、「――泣いているひまにどうしてそれをさきに云わないんだ」

そして彼は小屋の外へとびだしていった。千鳥はまた泣きだした。菅田平野は彼女が濡れたままの足袋はだしなのを見て、こいそに「足袋をぬがせておあげなさい」と云い、そばへいって自分の名をなのった。

「足袋をぬいだらよく拭いておくんですね、風邪をひきますから」と菅田平野は云った、「――もう泣くことはありません、お父さまを救い出す手筈もついているし、まもなく無事におさまりますよ、じつに世の中はふしぎなものだと思うんですが、井坂さんが戻って来たのは私と出会ったからでしてね、その出会ったもとはといえば、私が死ぬほど空腹だったからなんです、恥を話さなければ理がとおらないといいますが、お聞きになりたいですか」