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にちにちへいあん

日日平安

山本 周五郎

「サンデー毎日臨時増刊涼風特別号」1954(昭和29)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,297 字 · 56 页

青空文庫

記憶ちがいがあるかもしれません、呼びあう声で数えたのは十五人でした」

源太夫の片方の膝が上下に動きだした。

「すると」と源太夫が云った、「つまり井坂が江戸へゆくとみせて光明寺へ留り、そこへ同志の者を呼び集めたということですね」

「私の申上げた姓名にお心当りがありますか」

「ある、全部ではないが、三、四心当りがある」

「では人をやって在不在をたしかめて下さい」と菅田平野は云った、「――私はかれらが手分けをして、こなたさまをはじめ、仲島、前林のお三方を誅殺すると聞いたのですから、現在その連中が家にいなければ、事実だということがおわかりになるでしょう」

源太夫は鈴を鳴らしながらきいた。

「かれらは日時を申していたか」

「昨夜半の話で明後日と云っていましたが、今日の夜にはさらに人数を集めるように聞きました」

若侍が廊下へ来てかしこまった。源太夫は料紙と硯箱を持って来るように命じ、それが来ると、(菅田平野に聞きながら)九人まで名を書き、「この者たちの在否を至急にたしかめさせろ」といって、若侍に渡した。

「はなはだ汗顔の至りですが」と菅田平野が云った、「――昨日から食事をしておりませんので、まことに申しかねるが、朝食の馳走にあずかりたいのですが」