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にほんのでんせつ
日本の伝説
柳田 国男
「日本神話伝説集」日本児童文庫、アルス、1929(昭和4)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 页
この地方の織物業者が、稗の粥を織糸にぬるのは、もと姫神様のお教えであったといって、今でも四月二十一日の祭礼に、稗粥を造ってお供えすることになっているそうです。(明治神社誌料。石川県鹿島郡能登部村)
野州の那須では那須絹の元祖として、綾織池のかたわらに綾織神社を祭っております。大昔、館野長者という人が娘の綾姫の為に、綾織大明神を迎えに来たというのが、今の歴史でありますが、その前には驚くような一つの奇談がありました。この池は今から二百五十年前の山崩れに埋まって、小さなものになってしまったが、もとは有名な大池であった。その頃に池の主が美しい女に化けて、都に上ってある人の妻となり、綾を織って追い追いに家富み、後には立派な長者になった。ある時この女房が昼寝をしているのを、夫が来て見ると大きなる蜘蛛であった。それを騒いだので一首の歌を残して、蜘蛛の女房は逃げて帰った。そうしてこんな歌を残して行ったというのであります。
恋しくばたづねて来れ下野の那須のことやの綾織りのいけ
それで夫が、跡を追うて尋ねて来て、再びこの池のほとりで面会したという話もあります。歌はこの地方の臼ひき歌になって永く伝わっていたといいますから、これもまた那須地方の伝説であったのです。