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にほんのでんせつ
日本の伝説
柳田 国男
「日本神話伝説集」日本児童文庫、アルス、1929(昭和4)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 页
楓の一種ですが、花が美しく、また余りたくさんにはない木なので、この頃は非常に注意せられるようになりました。しかし美濃三河の山中などにも、たまに大木を見かけることがあって、大抵はあるとうとい旅人が、箸を立てたという伝説を伴うているそうであります。(近江国輿地誌略以下。滋賀県愛知郡東押立村)
この地方では今一つ、更に驚くべき御箸の杉が、犬上郡の杉阪という所にあります。大昔天照大神が、多賀神社の地に御降りなされた時に、杉の箸をもって昼飯を召し上り、それをお棄てなされたのが栄えたと伝えて、境の山に大木になって今でもあります。(老樹名木誌。滋賀県犬上郡脇ヶ畑村杉)
聖徳太子の御箸の木は、大阪にももとは一本ありました。玉造の稲荷神社の地を栗岡山、または栗山といってのは、その伝説があった為で、ここでは栗の木をけずったお箸であったといっております。太子が物部守屋とお戦いなされた時に、このいくさ勝利を得べきならば、この栗の木、今夜のうちに枝葉出ずべしといって、おさしなされたお食事の箸が、果して翌朝は茂った木になっていたと伝えられます。もちろん普通にはあり得ないことばかりですが、それだから太子の御勝利は、人間の力でなかったというふうに、以前の人は解釈していたのであります。