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にほんのでんせつ
日本の伝説
柳田 国男
「日本神話伝説集」日本児童文庫、アルス、1929(昭和4)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 页
袂石
信州では雨宮の山王様と、屋代の山王様と同じ三月申の日の申の刻に、村の境の橋の上に二つの神輿が集って、共同の神事がありました。その橋の名を浜名の橋といっております。東京の近くでは、北と南の品川の天王様の神輿が、二つの宿の境に架けた橋の上で出あい、橋の両方の袂のお旅所でお祭りをしました。そうしてその橋を行き逢いの橋というのであります。東京湾内の所々の海岸には、まだ幾つでもこれと同じお祭りがありますが、もとは境を定めるのが目的であったことを、もう忘れている人が多いようであります。そうして一方が姫神である場合などは、これを神様の御婚礼かと思う者が多くなったのであります。
袂石
昔備後の下山守村に、太郎左衛門という信心深い百姓があって、毎年かかさず安芸の宮島さんへ参詣しておりました。ある年神前に拝みをいたして、私ももう年をとってしまいました。お参りもこれが終りでござりましょう、といって帰って来ますと、船の中で袂に小さな石が一つ、はいっているのに心付きました。誰か乗り合いの人がいたずらをしたものであろうと思って、その石を海へ捨てて寝てしまいました。翌朝目が覚めて見ると、同じ小石がまた袂の中にあります。