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にほんのでんせつ

日本の伝説

柳田 国男

「日本神話伝説集」日本児童文庫、アルス、1929(昭和4)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 页

青空文庫

杖立て清水をもって百姓の難儀を救うまではよいが、怒って井戸の水を赤錆にして行ったり、芋や果物を食べられぬようにしたというなどは、こういう人たちには似合わぬ仕業であります。ところが日本の古風な考え方では、人間の幸不幸は神様に対するわれわれの行いの、正しいか正しくないかによって定まるように思っていました。その考え方が、今でも新しい問題について、おりおりは現れて来るのであります。だから私などは、これを弘法大師の話にしたのは、何かの間違いではなかろうかと思うのであります。

そのことは今に皆さんが自分で考えて見るとして、もう少し珍しい伝説の例を挙げて置きましょう。石芋、食わず梨とちょうど反対の話に、煮栗焼き栗というのが方々の土地にあります。これも今では弘法大師の力で、一旦煮たり焼いたりした栗の実が、再び芽を吹いて木になったといって、盛んに実がなっているのであります。越後の上野原などにある焼き栗は、親鸞上人の逸話になっていますが、やはりある信心の老女がさし上げた焼き栗を、試みに土に埋めて、もし私の教えが後の世で繁昌をするならば、この焼き栗も芽を出すであろうといって行かれた。