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にほんのでんせつ
日本の伝説
柳田 国男
「日本神話伝説集」日本児童文庫、アルス、1929(昭和4)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 页
実際近頃のお社の祭りに、そんな乱暴なことをしたかどうかは知りませんが、片目の魚を捕って食べぬこと、食べると悪いことがあるといったことは、そういう古い時からの習わしがあったからであろうと思われるのみならず、また話にはいろいろ残っております。例えば近江の湖水の南の磯崎明神では、毎年四月八日の祭りの前の日に、網を下して二尾の鮒を捕え、一つは神前に供え、他の一つは片面の鱗を取ってしまって、今一度湖に放してやると、翌年、四月七日に網にはいって来る二尾のうち、一つは必ずこの鮒であるといいました。そんなことが出来るかどうか疑わしいが、とにかくに目じるしをつけて一年放して置くという話だけはあったのです。
また天狗様は魚の目が好きだという話もありました。遠州の海に近い平地部では、夏になると水田の上に、夜分多くの火が高く低く飛びまわるのを見ることがある。それを天狗の夜とぼしといって、山から天狗が泥鰌を捕りに来るのだといいました。そのことがあってからしばらくの間は、溝や小川の泥鰌に眼のないのが幾らもいたそうで、それは天狗様が眼の玉だけを抜いて行かれるのだといっていました。