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にほんのでんせつ

日本の伝説

柳田 国男

「日本神話伝説集」日本児童文庫、アルス、1929(昭和4)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 页

青空文庫

しかしこういう池の主には限らず、神々にも眼の一箇しかない方があるということは、非常に古くからいい伝えていた物語であります。どうしてそんなことを考え出したかはわかりませんが、少くともそれがいけにえの眼を抜いて置いたということと、深い関係があることだけはたしかであります。それだから、また目の一方の小さい人、或はすがめの人が、特別に神から愛せられるように思う者があったのであります。大蛇が眼をぬいて人に与えたという話は、弘く国々の昔話になって行われております。その中でも肥前の温泉嶽の附近にあるものは、ことに哀れでまた児童と関係がありますから、一つだけここに出して置きます。昔この山の麓のある村に、一人の狩人が住んでいましたが、その家へ若い美しい娘が嫁に来まして、それがほんとうは大蛇でありました。赤ん坊が生れる時に、のぞいてはいけないといったので、かえって不審に思ってのぞいて見ますと、おそろしい大蛇がとぐろを巻いて、生れ子を抱えていました。それがまた女になって出て来まして、姿を見られたからもう行かなければならなくなった。子供が泣く時にはこの玉を嘗めさせてやって下さいといって、自分で右の眼を抜いて置いてお山の沼へ帰って行きました。