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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

為作の悴も大工であったが、藩の江戸屋敷の改築のときに江戸へ出た悴は、江戸で腕を磨くことにして、改築が終っても帰らずにそのままずっと江戸にいるうちに、吉原で深くなった女と世帯を持ち、続いて小供も出来たと云うので、江戸へ孫を見に往こう往こうと思っていたところで、昨年の暮になって風邪が元で亡くなり、その新らしい霊牌を持って、未見の嫁と孫がまだ深かった北国の雪を踏んで尋ねて来た。数年前に老妻を失っても悴があるので何とも思わなかった為作は、非常に力を落したものの、やがて嫁と孫の気もちが判って来ると、それに慰められるようになっていた。

「お祖父さん、お諏訪様は、どうしたら、出て来てくれるの」

二人は草原を出て麦畑の間を歩いていた。

「毎日、拝みに往って、頼んでおるなら出て来てくださるとも」

「そう」

為作の家は麦畑の間を芦垣で仕切った小家であったが、それでも掘立小屋と違って、床の高い雨戸もきちんと締るようになった家であった。為作は源吉を囲炉裏の傍へ坐らして、自在鉤にかけてある鍋の中から夕飯を盛って喫わした。為作は徳利の酒を注いで飲みだした。囲炉裏の火はちらちらと燃えて、為作の翁の面のような顔を浮きあがらした。