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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页
不動像の行方
本話
寒い風に黄ばんだ木の葉がばらばらと散っていた。斗賀野の方から山坂を越えて来た山内監物の一行は、未明からの山稼ぎに疲労し切っていた。一行は六七人であった。その中には二疋の犬が長い舌を出し出し交っていた。路の右手に夕陽を浴びた寺の草屋根が見えて来た。
「あすこに寺があったかなあ」と、監物は銃を左の肩に置きかえて云った。
「ありました。あれは清龍寺の末寺で積善寺といいます」
と、監物の背後を歩いていた臣の一人が云った。その臣の背には獲物の牡鹿が乗っていた。
「そうか、あれで一服しようじゃないか」
「そうでございます、が、今日は殺生の途中で、穢れておりますが」
「なに、今時は、坊主からして、魚も喫えば、獣も喫ってるじゃないか」
「そうでございますなあ」
「かまわん、かまわん、一服しよう」
生垣のある寺の門がすぐ見えた。監物はその門へ足を向けた。臣の一人は前打に監物より前へ入って往った。やがてその臣と左の足に故障のある窶々した住職が出て来た時には、監物たちは本堂の前に立って内陣に点った二三本の蝋燭の光に、大小の仏像の薄すらと浮いているのを眺めていた。