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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

父親は起きあがって蒲団の上に蹲んだようであった。

「そうですよ、また裏門の戸を叩きます、私も往きますから、お父さんもいっしょに往ってくれますか」

「往きましょう」

父親は起きあがって伯父さんの前に立った。

「それはすみません」

伯父さんが前にたって歩くと父親は後から踉いて来た。二人は暗い中を庖厨の方へ往って其処から裏口へ出たが、二人はもう黙りあって何も云わなかった。気のせいかその晩はわけて暗いように思われた。

戸を叩く音が聞えた。

「何か用かね、何人だね」

伯父さんは恐ろしそうにかすれた声で云った。

「私でございます」

微な顫え声が聞えて来た。やはりそれは芳三の声であった。

「芳三か、何かまだ云いたいことがあるか」

「はい、この間は衣服から一切私の物を埋めて貰いましたが、まだ家にあった金のことが気になってなりません、どうか金もついでに埋めてください」

「金か」

「金でございます、その金のことが気になって、浮ばれません」

金と云ってもいくら埋めて好いか判らない、それに医師や葬式のために非常に入費がかかって、現金があまりないことは判っていた。

「金がいくらあったら好い」