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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

甚九郎の女房は人間ではなかった。甚九郎はその五六日行商に出て留守であった。源吉は甚九郎が帰って来ると甚九郎を己の家へ呼んで、それとなく女房のことを話した。

甚九郎も女房のすることに就いて不審の晴れないことがあった。それに壮いな顔をしている時があったり、凄い狼のような顔をしている時があったり、また背の高い時があったり、背の低い時があったりして、そればかりでも疑うには充分であった。

甚九郎は源吉の知恵を借りて女を離縁しようとした。それには大屋さんの力も借りなければならないので、彼はしかたなく大屋さんに事情を話した。

甚九郎と打ち合せをしている源吉は、すました顔をして甚九郎の家へ来た。

「大屋さんが話したいことがあるから、来いと云うぜ」

甚九郎は源吉に跟いて出て往ったが、やがて帰って来て女房に向って、

「大屋の親爺め、煩いことを云ったよ」

「どんなことを云ったの」

と、女房が聞くと、

「いや、べつにたいしたことでもないが……」と、詞を濁す。

翌日になるとまた源吉が来て大屋さんからだと云った。甚九郎はまた源吉といっしょに出て往ったが、今度はよっぽど遅くなって帰って来た。