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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页
「大屋さんは、なんだね」
と、女房が聞く。甚九郎は顔に苦しそうな表情を見せた。
「困ったことになったよ、先月、奥州棚倉の桜町に、みさかや助四郎と云う者の女房が、所天はじめ、舅姑を刺殺し、金銀を奪い取って、家へ火をかけたうえで、浄土宗の坊主と逐電して、坊主はすぐ捕まったが、女房が今もって行方が知れないために、江戸までその詮議があって素性の知れない怪しい女は、搦め執って突きだせと云うお触れがあった、お前も仲人なしに来た女だから、一まず里へ帰って、更めて女房にするようにと、昨日から云われているのだ、こんな迷惑なことはないが、泣く子と地頭と云うこともある。一まず在へ帰ってくれ、後からすぐ伴れに往く」
女房の顔は見る見る物凄くなった。
「悪人には人相書がある、悪人でないか、悪人かはすぐ判ることじゃ、そんなことを云うのは、私が嫌になったからこしらえて云うことだろう」
甚九郎は恐れて折角の謀をうやむやにしてしまった。とても女を出て往かすことはできないから、己から逃げようと思った。彼は川崎の方へ行商に往くと云って家を出、川崎の方へは往かずに奥州街道をくだって三春へ往き、其処の二日町と云う処に借家をしていた。