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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

「俺は七十になるが、まだこんな不思議なことに逢ったことはない、奇体なことじゃ、これは何かの兆と思われる」

その翌日の昼比不意に旋風が起って、村の百姓屋の物置小屋を捲きあげて春日川の川中へ落した。山から薪を着けて来た一疋の黄牛が、その旋風に捲きあげられて大根畑の中に落とされた。

「これは、どうしてもただごとではない、きっと怖ろしいことの前兆じゃ」

「怖ろしいことじゃ、怖ろしいことじゃ、これは何かの祟りじゃ」

それから四五日経った。朝から降っていた雨は夕方から風が添うて、怖ろしい暴風雨となり一晩中荒れ狂った。その暴風雨の中に山崩れがして、三軒の農家が埋まったが幸いに死傷はなかった。

「ますます不思議じゃ、どうしても、これは何かの物怪じゃ」

「これは、早く払わないと、このうえ、どんな事があるかも判らない、困ったことになったものじゃ」

「監物殿が、戸波の寺から、不動様を持って来たから、それからじゃ」

「どうも不動様の祟りらしいぞ」

監物の耳にこうした噂も伝わってきた。彼はこの噂を聞いて冷笑した。

その翌々晩、某臣の家の酒宴に招かれた監物は、夜遅く一人の若党に提灯を持たして、己の邸の傍まで帰って来たところで、祝い物を入れて往った布呂敷包を忘れたことを思い出したので、若党に執りに往かし、己は暗い道を邸のほうへあがって往った。