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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

「どうも達者すぎてこまります」

「それは目出たい、今日は留守のようだな」

「いや、昨夜、遅く便所へ往きよって、ひっくりかえって鍋で額を怪我して、裏の木炭納屋で寝ております」

「なに、鍋で額を切った、よっぽど切ったかな」

「私は眠っておって知らざったが、母が起すから庭へおりてみると、額を切ったと云うて、衣を破いて巻いておりました、我慢の強い人じゃから、見せえと云うても見せませんが、今日は飯も少ししか喫わんところを見ると、よっぽど切ってたろうと思いますが、見せんからこまります」

飛脚はいよいよ怪しいと思った。で、その老婆に逢って正体を見届けたいと思った。

「それはいかん、どうかして、傷を見てから、薬をつけんといかん、私の印籠の中には、好い金創の薬があるから、つけてあげよう」

「そうですか、それはありがとうございます、どうかつけてやってつかあされませ」

「好いとも、それじゃ、これから二人で往って、私がつけてあげよう」

「それはどうもありがとうございます」

二人は伴れ立って家の右側から廻って裏口へ往った。其処に小さな木炭納屋があった。二人はその中へ入って往った。右側に莚を積み重ねた処があって、その上に背の高い老婆が此方へ足を投げだして寝ていた。