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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

翌朝になってお種が一二枚の洗濯物を持って出かけようとするので、裏の納屋の口で麦の穂をこいていた母親が止めた。

「一枚二枚はめんどうじゃないか、明日またいっしょに洗うたらいいじゃないか」

「いっしょになったらうるさい、洗うてくる」

「お前がうるさいなら、わしが洗うてやる、今日はやすんだら、どう、麦を刈る時分は時候がわるい、やすんだらいいじゃないか」

「ついでに洗うてくる」

母親は強いて止めずに思うとおりさしておくがいいと思った。

「それなら洗うて来た、はようもどったよ」

「あい」

お種は眼だたないように化粧をして常服ではあるが新らしい衣服に着かえていた。母親はふとそれに眼をつけて何かしら不安を感じた。

「はようもどったよ」

「あい」

お種はものに引き寄せられるようにして出て往った。母親はその後を見送って考え込んでいたが、そうしてもいられないので急いで麦の穂をこきだした。母親はそうして麦をこいているうちにもお種のことが気になるので、半時ばかりして往ってみた。

お種は洗濯物を平生の処へ浸したままで姿が見えなかった。母親は驚いてそのあたりを探して歩いたが、何処にもお種はいなかった。