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にほんイデオロギーろん
日本イデオロギー論
戸坂 潤
――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页
だが、仮に私が之まで云って来たことに反対でなくても、又啓蒙の今云った今日に於ける意義を一応認めなくはないにしても、なおこの問題に大して興味を持てない、という種類の識者が、日本のインテリゲンチャの内には決して尠くない。吾々はそういう事実を見逃せない。啓蒙も好いだろう、併し啓蒙よりも遙かに大切なものが吾々の手元には沢山ある。例えば研究・反省・自己不安・等々が何より吾々には大事で、抑々ひとを啓蒙するなどは後回わしにしたらばどうか、と云った具合に、この種のインテリはまず私達自身を「啓蒙」しようと企てるのである。――無論それもいいだろう。だがそうやって研究し反省し或いは自己不安することによって諸君は何を導き入れるか。例えば全体性・体験・ゲマインシャフト・などという「哲学的」に尤もらしい諸範疇の強調は、殆んど総てこうした謙譲な研究家や反省家や不安家自身の口から洩れたものに他ならないのだ。之は現代的神秘主義・現代的蒙昧主義の、衒学的な基礎工事に他ならないのである。抽象的に考えれば、なる程部分主義よりは全体主義が良いし、体験無視より体験尊重が正しいし、ゲゼルシャフトよりもゲマインシャフトの方が人間関係として勝っているに決っている。