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にほんイデオロギーろん

日本イデオロギー論

戸坂 潤

――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页

青空文庫

次第に啓蒙されつつあるドイツはカントによると、フリートリヒ二世の文化的経綸のおかげであって、ドイツ統一によるドイツ資本制化のために、ドイツ諸公に対する大王にとって必要な進歩政策の結果だった、などとも考えられていない。そして特に注意すべきは、カントが啓蒙による理性の自由活動を専ら文化人の文化人に対する文化活動に限っていることだ。市民的職業や地位に就いて理性をどんなに自由に使っても、それは一向啓蒙活動でないばかりでなく、フリートリヒの治下に於ては一個のバーバリズムででもあるかのようにさえ考えているらしい。カントの啓蒙に於ける自由主義の契機が、いかに文化的自由主義に限られているかが、これで判るだろう。

啓蒙に於ける自由主義の契機をこうやって蒸溜して見せた点では、カントは最も代表的な啓蒙思想家であると云ってもいいが、併し実はカントこそ却って、ドイツに於ける啓蒙批判家・啓蒙脱却者であった。一体彼の啓蒙に対して下した例の定義そのものが、ドイツは云うまでもなく、当時のヨーロッパ・イギリスに於ける事実上の啓蒙現象を云い表わしたものでは決してなかった。夫は寧ろ云わば啓蒙の理想を、啓蒙の永久に変らぬ普遍的な主義を、つかみ出そうとしたものに外ならない。