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にほんイデオロギーろん

日本イデオロギー論

戸坂 潤

――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页

青空文庫

全国の公娼五万三千人の身柄の(形式的に止まらざるを得ないにしても)自由のために、そして全国五百三十の遊郭の不幸のために、それから又三百年の国粋的伝統(?)の愛惜のために、之は記憶されるべき大勢なのである。

この大勢と当局の方針とを早くも察した楼主達は、貸座敷業から料理屋にまで転業することを欲している。尤も当業者の商売が不振でなければ決してこういう当局の方針も発生しないのだが。例えば洲崎の百三十の楼主達は警視庁にその嘆願運動をしたと云われている。云うまでもなく楼主自身から見ての営業不振が唯一の動機であって大勢を察した察しないという問題ではないのだが、併し天下の大勢なるものは、いつもそうした物質的根拠以外に依っては成り立たない。

そこで廃娼運動の中心勢力であった「廃娼連盟」は三四年末を以て解散し、それに代わって直ちに「純潔郭清会」が組織されて、新しい運動に這入ったのであるが、処がここに一つの問題が発生したのである。

元来廃娼運動は、云うまでもなくその本来の立場から云えば、社会に於ける公私一切の売笑制度の撤廃乃至撲滅を窮極目的とするものであるが、そういうことは社会組織そのものの問題に帰することであって、単なる売笑廃止問題としては片づかない。