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にほんイデオロギーろん

日本イデオロギー論

戸坂 潤

――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页

青空文庫

そうした意味に於ける思想として、現代日本に於てまず第一に挙げられるべきものは、自由主義なのである。世間の或る者は自由主義が昨今転落したと云っている。だが、そういうならば一体最近に転落し得るようなどういう自由主義が旺盛を極めていたか、と反問しなければならなくなるだろう。少くとも最近、自由主義は世間の意識に少しも積極的に上ってはいなかった。大戦以後、自由主義思想が勢力を有ったと見られ得たのは、僅かに吉野作造氏等によるデモクラシー運動位のものだったが、それもマルクス主義の駸々たる台頭の前には、完全に後退して了ったと見ねばならぬ。それ以後意識的に自由主義思想が高揚したのを吾々は見ないのである。だがそれにも拘らず、自由主義は明治以来の社会常識の基調をなして来ているという他面の事実を忘れてはならない。

云うまでもなく日本に於ける民主主義は決して完全なブルジョア・デモクラシーの形態と実質とを備えたものではなかった。封建性に由来する官僚的・軍閥的・勢力との混淆・妥協によって、著しく歪められた民主主義でしか夫はなかった。併しそれが夫なりに、矢張り一個の民主主義を基調としたればこそ民主主義の歪曲でもあり得た、という点が今大切である。