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にほんイデオロギーろん

日本イデオロギー論

戸坂 潤

――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页

青空文庫

で、もし自由を愛好するということから(唯物論者は恐らく誰よりこの自由を愛求しその妨害を誰よりも憎悪するが)、自由主義という独自な哲学体系がすぐ様約束されるとしたならば、靴屋は靴哲学を、床屋は頭髪哲学を有つことになろう。――豊かな情緒の自由主義は哲学組織となろうとする時、忽ち平板な貧寒な理論となる。と云うことは、自由主義そのものが、決して本当の自由主義の正当なイメージでなかったことを証拠立てている。河合教授が自由主義哲学の未成立を憤慨しなければならないのは、決して教授の偶然な不幸ではないのだ。

自由主義の所謂「転落」に就いて最も興味を感じているものは云うまでもなく唯物論ではなくて日本主義である。処がこれまで、日本主義の側からする自由主義の多少とも理論的な批判は、甚だ少ないようだ。藤沢親雄氏の「自由主義を論ず」(『社会政策時報』一九三五年五・六月)などが多分最も注目すべきものだろう。

だが藤沢氏はその専門である政治学に因んで、眼中には政治的自由主義しかないのである。氏によると、今日政治的自由主義はすでにその役割を終えた、というのである。法治主義たる自由主義的国家理論は、国家を社会から出来るだけ引き離し、国家なるものから出来るだけ社会的倫理的な意義を差し引いて、わずかに法治的行政行為の機能だけを国家の側に残そ