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にほんイデオロギーろん

日本イデオロギー論

戸坂 潤

――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页

青空文庫

二

マルクス主義の時代は去った、自由主義もまた終った、と叫ぶ、市街や農村に於ける常識的文明観は、そういう気持ちに終始するのである。――ただの鯨波の声ならば、敵も味方も同じスローガンで結構なわけだ。そこで空疎になった合言葉としての進歩は、今では誰にでも利用され得る観念になりつつある。現にそういう危険に現在は臨んでいるのだ。

二

一体進歩という概念に就いては、歴史哲学的にも色々と苦情がこれまでないのではない。進歩というのは何か一定の目標・目的物を想定した上で、それに近づくことでなければならぬと考えられるのが普通だが、して見ると、この概念は歴史の目的論的仮定の上でしか意味のないものになるだろう。そしてもし歴史の目的論が何かの理由で理論的に困難であったり成立出来なかったりするならば、同時に進歩の観念も決して科学的ではあり得ないということになるのである。

歴史の動きを進歩と見るのは、非科学的な歴史認識であり、実際の歴史の動きの内に神学的な仮定や(神の世界計画図の実現の如き)倫理的評価(人格の完成や善への到達の如き)を押し込む前科学的な歴史学に他ならない、という考えである。