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にほんイデオロギーろん
日本イデオロギー論
戸坂 潤
――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页
(三)ならば模範は模範であって少しも論拠ではない。――だからいずれにしても、古典はあくまで参考物の限界を出ないもので、現在の実際問題解決のための論拠を提出する使命をもつものでもないし、又持ってもならない。
ただ古典の大切な条件の一つとして、それが歴史的に伝承されて今日現在に至ったものだという点を忘れてはならぬ。そうでなければ古典ではなくてただ過去の一介の歴史的所産にしか過ぎない。でこの古典が引く伝統の糸は、哲学なら哲学史の、社会科学なら社会科学史の、流れを貫いていつも不断の作用を各時代に及ぼしている。だからして古典は論拠とされてはならぬが、併し又必ず参照されねばならぬものとなる。つまり古典とは実際問題の必要に応じて批判され淘汰・陶冶されて行かなければならないものなのである。
批判と淘汰・陶冶を用意しないで、その意味で無条件に、古典を何かの用に役立てることは、その言葉が示す通り、文献学主義の根本特色の一つである。古典の引用に当ってもこのテーゼはその通りあてはまる。自分の主張を単に権威づけるために、古典的文章を引用することは、単に馬鹿げた無用なことばかりではなく、現在の問題を古典の時代の問題にまで引きかえす処の反動をさえ意味しているのだ。