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にほんイデオロギーろん

日本イデオロギー論

戸坂 潤

――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页

青空文庫

キリスト教的(主にプロテスタント的)神学や仏教的哲学を通って、自由主義者の哲学は宗教意識へと移行するのを、読者は至る処に見るだろう。今日教養あるインテリゲンチャが宗教観念に到達する道は、多くはここにあるのであって、この種の宗教意識は、この段階に止まる限り(この段階からもっと進めば別になるが)、自由主義意識の一つの特別な産物なのである。

この宗教的自由は云うまでもなく政治的自由からの自由を意味する。現実からの逃避を意味している。処がここに実は、宗教の第一義的な真理が、即ち又その第一の用途が、横たわることは人の知る処だ。社会に於ける現実的な矛盾がもはや自由主義思想のメカニズムでは解決出来なくなった現在のような場合、その血路の一つが(但し唯一の血路ではないが)ここにあるのであって、矛盾の現実的な解決の代りに、矛盾の観念的な解決が、或いは矛盾の観念的な無視・解消が、その血路である。現代は、従来国家的又社会的に認定された「既成宗教」や、比較的無教育な大衆の上に寄生する所謂邪宗の他に、インテリゲンチャを目あてとする多少とも哲理的な新興宗教の企業時代だが、一般に自由主義に基くインテリゲンチャの動揺がなければ、こうした企業の目算は決して成り立たない筈であった。