轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
おもかげ
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,412 字 · 25 页
家中の人びとは席を設けて祝って呉れた、そしてそのことが国許へも伝わったのであろう。暫らくして叔母の由利から祝いの手紙が届いた。「お祝い申上げそろ」というごく簡単なものだったが、「さっそく平等院へまいり、御墓前にてめでたき仔細あらまし申しつぎまいらせそろ」うんぬんという一節がはげしく胸を刺した。弁之助は手紙を持ったまま眼をつむり、ふかくふるえるように溜息をついた。平等院の墓地がありありと見えるようだった。塾からの帰りにまわりみちをして、ひっそりと墓標の前へ跼みにいった日のこと、雪が溶けて土のやわらいだじぶん、花菫を抜いていっては植え集めたこと、そしてやがてそれをみんな叔母に抜き捨てられたときの悲しかったことなど、切ないほど鮮やかに思いだされた。……彼が小姓にあがったのはその年の夏のことであった、小姓といっても学問所の業があるので、ほかの者のように日にち御殿へ詰めるのではなく、定日に伺候して御主君に経書の講義をするだけの役だった。然しむろんこれは将来の出頭を約束するものなので、家中の人望はますます大きくなるばかりだった。
その年が明けると間もなく、参覲のいとまで飛騨守が帰国するとき、弁之助も供を申付けられて故郷へ帰ることになった。