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にっき

日記

宮本 百合子

30 一九四七年(昭和二十二年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,669 字 · 24 页

青空文庫

八月二十三日

二十四日

八月二十三日(土)

多賀子七時すぎの汽車でかえる。

この部屋は休んでのんびりするより仕事をさせる方の部屋だ。まだすこしよたついているのに部屋の方が仕事へ仕事へとかり立てるような部屋。しかしそれはうれしい。小松の二階のあのかっちまりのない、かたいガランドウからみれば。

「パルムの僧院」をよみはじめる。面白い。しかしどうしてスタンダールはこんなにせいたのだろう。せきすぎている。これを一ヵ月ばかりで書くなんて!

古在さんのところへ風呂を貰いに行っていたら

お父ちゃんが来た!

ワァー! お父ちゃん

お父ちゃん!

ほんと? と母さん、

という大歓迎の叫びをきく場面にめぐり合わせた。子供たちは接吻したりしないで、いきなり汗びしょの古在さんの肩車によじのぼってゆく。実にいい。儀式化されない愛情の表現は面白い。日本の小説はこういう天真ランマンな日本人の感情表現を十分あらわす力をもたなかった。

二十四日(日)

m、来るだろうか。七時前におきて、朝はんたべたらぐったりして一ねむり。おきて時計をみる。十時には来なかった。パルムをよむ。よみつつ考える。こんなところにひとり暮していて、来てくれるだろうか、来られないだろうかと待っていて、うけ身一方で待つなんて、殆ど屈辱的だ。