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めいあんよめもんどう
明暗嫁問答
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1946(昭和21)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,984 字 · 43 页
過去をもっている。それで若い者の気持はよくわかる積りで、福山でも時おり青年たちを伴れて遊ぶことがあった。年代が違ううえに老人の遊びは江戸仕込みだから、福山の青年たちには迷惑なことが多く、二度か三度つきあうとたいてい御免を蒙った。勘太夫は理由を知らないから、「少しは遊びも知らなければ人間いちにんまえにはなれない」などといい気なことを云っていた。妻に死なれてからはぴったりやめたが、直二郎が来て暫くすると、久しぶりに彼をつれて出かけた。
「老職ともなるには堅いばかりではいけない、世間の表裏、人の心の虚実、硬軟緩急よく周囲に処する法を知る必要がある、それにはときおり遊ぶがいい。溺れたり乱れたりしてはいけないが、節度を守って遊べば教えられることが多いものだ」こういって、芦田河畔にある料亭へつれてゆき、自分の養子として紹介した。「どうだ、こういう世界も悪くはあるまい」座ができて、おんなたちも揃って、ご自慢の荻江節などを披露すると、老人はそう云ってきげんよく甥の顔を見た。直二郎は例のくりくりとした眼をなにやら眩しげに細めながら、「はあ、なかなか結構なものでございますな」