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しょもつをあいするみち
書物を愛する道
柳田 国男
「書物新潮」1940(昭和15)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,750 字 · 12 页
古書の我々に役立つものの数を少なくした原因は、寧ろ註釈に在ると謂ってもよい位で、何か世俗的の理由がある本ばかりに、やたらにそれをする故に他の部面が御留守になり、しかも仕事に勿体をつけようとして誉めたててばかり居るから、読者は却って自由なる取捨判別を妨げる上に、更に一つの弊は註の無いものに出て行くことを臆病にする。註に導かれて本を読む癖を棄てないと、独自の発見を期することは出来ぬのである。文庫の目的は少なくとも豊富なる読みものを提供して、任意に其中からめいめいの好みと入用に合するものを、見つけ又は択び出させるに在るのだから、片端から註釈を付けて置くわけにも行くまいし、仮に其様な手数な事をして置いても、自分が読み得たような気はせぬであろう。
崩した文字で書いた昔の写本を、楷書の活字になおして印刷すると同じく、古文の書きなおしということも或る程度までは必要かと思う。たとえば送りがなの数を加え、振りがなが見苦しいとならば、そこだけはかな文字に改め、又は返り点の付くような文字はまっすぐに書くとかいう類の、ほんの僅かな工作を施せば、一見した所非常に親しみやすく、且つ読んで見てもずっと楽になる。